(海賊版)【ゆっくり文庫】 蒲松齢 「幽鬼」
①、原作について
清代に蒲松齢によって書かれた中国の怪異譚 『聊斎志異』に収められた短編小説、「小謝」。
この蒲松齢という人物は面白いひとで、街ゆくひとに「変わった話はないか?」と聞いていたそうだ。社会的な地位としては「小謝」の主人公と同じく生員のまま一生を過ごした。家庭教師を引き受けて生活しつつ、何度も受験するも、どうしても郷試に受からなかった。
そのせいか、『聊斎志異』に出てくる主人公たちは生員であることが多い。
原作は妖艶。
この一言に尽きる。性的な描写もあって色っぽい。400年前のライトノベルとも呼べる。『聊斎志異』の中には幽鬼と化け狐が人間の男を取り合って争う話なんかもある。幽霊と酒を呑んで友達になったり、花の兄妹と一緒に暮らしたり、絵の中に入り込んで生活したり、バラエティ豊かで面白い。「酒虫」も『聊斎志異』の作品だ。また、当時の物語らしく政治色も入っており、風刺が効いている。
②、動画と原作のちがい
動画と原作では色々と違う。
まず、最初の導入シーンからして原作にはない。居酒屋のシーンは2005年のドラマ「聊斎志異」からアイデアをもらった。(こちらは中国のTVドラマで日本語化はされていない) 他にも、幽鬼が本を投げ合ったり、陶が友人と話し合ったり、道士との問答から、果ては物語のオチまで原作と違っている。
一番大きな差異である、物語の結末について説明しよう。
原作では道士の札で幽鬼が人間に戻って、三人で幸せに暮らす。
動画では逆に人間が幽鬼になって、三人で幸せに暮らした。

これは奇をてらったわけではなく、伝えたいテーマのために改変したのだ。
③、テーマについて
台本段階では、物語内で2度も明言させるつもりだった。
ただ、私が解答をポンと出すだけでは、視聴者の皆様に、頭を使って考えてもらえるか不安だった。だから、主人公は友人の「どうするんだ?」という質問に対して、無言の笑顔で応えさせた。道士も主人公の質問に対して「既に答えを出しておる」とはぐらかすように変更した。(半年前の私なら、こーゆー小技を思いつかなかったでしょう)

「幽鬼」のテーマは
その人物の良し悪しは、当人の行いによって決めるべし。でした
「幽鬼だから」「自分にとって邪魔だから」という価値基準で行動していた初期の主人公はボロボロに疲弊するが、そういった色眼鏡を外して、自分と同じ、尊重すべき相手として幽鬼と接するようにした主人公はうまくいく。(ここら辺の決意表明を、中盤の居酒屋のシーンで行わせる予定でした)
最後の決断のときに主人公は「自分が幽鬼たちに合わせよう!」と腹を決めた。だからラストが原作とちがうのだ。原作の、幽鬼が人間に戻ってしまう結末は、「やっぱり人間って最高だな!」という動画のテーマとはまったく異なる答えに行き着いてしまう危険性があった。正直、こういった翻案に対する皆様の反応が読めず、動画を作りながらずっと不安だった。
④、動画作成について
幽鬼を可愛らしくみせることに尽力した。
可愛らしさというものは顔の角度ひとつで崩れてしまうこともある。本家本元のゆっくり文庫さんの強化素材があったおかげで表現できる幅が広がり、より可愛らしくなった。そもそも灰色の顔パーツがなければ、幽鬼を作る気にもなかなかっただろう。いつもながら、ゆっくり文庫さんには頭が上がらない。
上でも述べたように、制作しながら何度も不安に襲われた。
「制作中断」の文字が頭をチラついた夜もたくさんあった。それでも私が手を動かせたのは、いくつかの幸運が重なったからだ。まず、私以外のゆっくり文庫のリスペクト動画がいくつも投稿された。他所様の動画を見ると元気を貰える。特に最近投稿され始めたソウ助さんは投稿ペースが速く、「止まっている場合じゃないな!」と背中を押された。(他の投稿者様方にも個別に感謝の意を表明したいところではありますが、涙を呑んで割愛)
もちろん、皆様のかつてのコメントからも助けてもらいました。
ありがとうございます。
次回は番外編動画を挟みます。お楽しみに!
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