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(海賊版)【ゆっくり文庫改】 乙一 「リストカット事件」

1,原作について

 『GOTH』という短編集に収められた一作。作者の乙一はダークな雰囲気の物語をたくさん執筆していて、『GOTH』はその代表作とも言える。動画を視聴していただけたなら伝わったと思うが、一般ウケは難しいストーリーではあるものの、作品としての出来が良く、一部の人々から評価が高い。

GOTH.jpg

 『GOTH』に収められている短編の中でも、「リストカット事件」は象徴的な作品であり、単行本の副題にもなっている。ヒロイン 森野のキャラクター性については、ソウ助さんが動画化された「追憶」で詳しく語られているが、主人公のキャラクター性については「リストカット事件」のほうが色濃く表れている。「追憶」が光で、「リストカット事件」が闇。両方あっての『GOTH』だと思ったので、「リストカット事件」を動画化した。





2,動画化するにあたって

詳細は省くが、ゆっくり文庫素材が使えなくなった。
その影響で8割方完成していた2つの作品が消し飛び、2021年は何も投稿できずに終わった。
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(↑ほぼ完成していた動画 『サンタ条項』)

だったら自分で素材を作ればいいじゃないとペンタブを買って絵の練習を2ヶ月ほどやったものの、まあ、うん……
しっかりしたイラストを描いている人は、それこそ幼少期や学生時代から時間と精神力をたくさん注ぎ込んで、その技能を獲得してきた。それを、本当に1からの初心者がまともなレベルのイラストを数ヶ月で描けるようになるわけもなく、2ヶ月間かけてオリジナルゆっくりキャラを2体だけ作成して、その出来栄えに満足できず、ペンタブを放り投げた。
01.png
             (↑自作したゆっくりキャラ。けーき)


これではお話にならない。いや、お話を動画化できない。



そんなとき、ソウ助さんが『GOTH』用のオリジナルのキャラ素材を作られた。

タイトルなし

出来が良い。『GOTH』の主人公らしいスカした好青年と、ちょっとぽっちゃりした美人。差分パーツも一通り作成されていて、ちゃんと動画で使える。ぴったりだ!!
これは土下座してでも使わせてもらおう。ソウ助さんに話を通すと、快諾していただけた。

ようやく、スタートラインに立てた。










今回は台本段階で削れるシーンがほとんどなかった。ほぼ全てのシーンにフラグが埋まっている。
どうやっても30分を越えそうなので、ソウ助名誉監督に「ひとまず前半だけ投稿しようと思います」と伝えたところ、
「全部作ってから投稿しなさい(意訳)」とありがたいお言葉を頂いたので、30分越えの動画が爆誕した。初めての試みで、これはこれでメリットもあったので面白い体験だった。


それと、毎度の事ながら素材集めでも苦労した。
”手”はシルエットを使用すると最初から決めていたが、意外な素材がなかった。たとえば、空っぽの冷蔵庫を正面から撮った写真。30分くらい探してみて見つからなかったので、自宅の冷蔵庫を撮影した。




3,今後の活動について

私は動画作成が好きなので続けていきたい。
しかし、私は素材を作れないので、「素材がなくて動画を作れない」状態になってしまう可能性もある。
今回のように他所様からキャラ素材をお借りできることを願うばかりだ。

以前より少々不自由になったが、私はやれることをやるしかない。
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(海賊版)【ゆっくり文庫】カート・キャノン「幽霊は死なず」








①、原作について




 原作は1953年に「Die Hard」というタイトルで発表された。

 カート・キャノン名義で書かれているが、作者の正体はエド・マクベイン。

 エド・マクベインは、ジャズ・ミュージシャンに憧れたり、画家になろうと美術大学に入ったり、
自身の才能に絶望して軍隊に入隊したり、兵役中に読書に目覚めたり、職業訓練校の教師になったり、
かなり破天荒な経歴を歩んだ末に小説家となった。

 小説家としての腕前はピカイチで、量、質ともに高く評価されている。
 (アメリカ探偵作家クラブ・巨匠賞、受賞)


img_09_2.jpg
(エド・マクベイン)



 翻訳された時代は1963年。

 『鉄腕アトム』のアニメ放送が始まった年だ。
しかし、原作を読んでいただければ実感できるが、ビックリするぐらい現代的なのだ。
中学生時代の私でも、スラスラ読めるほど、自然で、味のある言葉遣いで、まるで魔法のようだ。

 翻訳者は都筑道夫。

 ちなみに、この都筑道夫も只者ではない。
翻訳家であり、雑誌編集者でもあり、そして作家でもある。

ついでにいうと都筑道夫はカート・キャノンシリーズに惚れ込み、自分でもカート・キャノンの贋作の続編を6作品も執筆している。
(もちろん、本家に執筆許可を取っているが、それにしたって普通はそんなことしないよ!)

 それほど愛された作品だったのだ。






②、動画制作について


 今回の動画は、正直、作りにくかった。

 道具には向き不向きがある。
 YMM(ゆっくりキャラ)はコメディやパロディのような明るい作品を動画化することには適しているが、
ハードボイルドのような暗く、暴力的で、性的で、殺伐とした話を表現するには向いていない。

 ひょっとしたら、たまたま私がそう感じただけで、一般的には真逆なのかも知れない。
(真偽を確かめるために、みなさんもハードボイルド作品をゆっくり動画化してみませんか?)

幽霊は死なず後編

 それでも、この画面を作れたときは大喜びで飛び跳ねた。(かっこいいでしょ!)












③、「幽霊」とは何か?



 「原作について」でも触れたが、元々のタイトルは「Die Hard」

 日本語の「幽霊は死なず」は翻訳者の都筑道夫が生み出したタイトルである。
私はこのタイトルが好きだ。原作の「Die Hard」というタイトルは一連の語呂合わせの一部であり、
単発のタイトルとしては「幽霊は死なず」のほうが適しているとすら思っている。

 もちろん、私の感性が唯一解ではない。(正解は無数に存在すべきだ!)

中編_Moment4


 そのうえで、これから先の解説文を読んでもらいたい。



 「幽霊」とは何か?

 言葉を変えよう。





 キャノンを酒に、ジェリイを麻薬に駆り立てたものは何なのか? 




 キャノンのほうは分かりやすい。
 動画内でも何度も出てくる、妻と親友の不倫騒動だ。

 ジェリイはどうだろうか?
 こちらは少し妄想力が必要になってくる。何せ、動画や原作で説明されていないのだ。
それでも妄想で物語を補うことはできる。本人が認める通り、キャノンとジェリイには共通点がある。
キャノンには妻が居て、ジェリイには婚約者がいた。過去の二人はそれぞれ幸せだった。

 ――そして、それは同じように終わった。

中編_Moment


 ジェリイの婚約者は(ジェリイを救うためとは言え)、あっさりキャノンに抱かれた。
 おそらく、そういう行為に強い拒否感を抱くような人物ではないのだろう。

 もちろん、それ以外の可能性もある。
単純にジェリイの勘違い、無鉄砲な冒険の結果、その他の失敗……
悲しいことに、人間が絶望する理由はいくらでも存在する。


 ただ、私は幽霊の正体を「不信感」だと思っている。
















④、消せない不信感



 「不信感」というものは本当に厄介なもので、冗談が冗談に聞こえなくなり、
親切さが慇懃無礼と感じるようになるうえに、忠実さは面従腹背と受け止められる。

 皆さんにも、苦い思い出の一つや二つはあるだろう。


 一度芽生えた「不信感」が消え去ることはそうそうない――




デフォルト854x480_30fps_44100Hz(854x480)_Moment







 キャノンも、ジェリイも、幽霊を殺せなかった。


 幽霊は死なない。







デフォルト854x480_30fps_44100Hz(854x480)_Moment4





(次回はもっと明るい動画を作ります! お楽しみに!)

(海賊版)【ゆっくり文庫】H・R・ウェイクフィールド「目隠し遊び」








①、原作について



「英国怪奇小説最後の書き手」とも称されるH・R・ウェイクフィールドの短編小説。
作者は実際に叔父の館を相続しており、そこでの体験を元に小説を書いた、と本人は語っている……

……本当かな?


 原作は芸術的なまでに巧緻で怖ろしい。
私の動画に「動画だから動きがあって面白いけど、小説だとつまらなさそう」とのコメントが付いていた(ありがとう!)が、ご安心を。原作はとてつもなくダークで、怖ろしく、そして何より面白い!!









②、動画制作について



 今回は「夏の怪談祭り」という企画から始まった。(企画者のソウ助さんに感謝!)


 ここでひとつ覚えておいてほしい。
 YMMで動画を作るにあたって、製作者には無数の制約が存在する。


 例えば、丹下左膳(片手片目の剣士)は出せないだろう。素材がない。
 ついでに言えば、のっぺふほ(妖怪の一種)みたいなマイナーな妖怪も難しい。同じく素材がないのだ。

 さらに、ゆっくりキャラクターの表情にも限りがある。

 「SAN値が削れて発狂した顔」は見せられない。


 こういうとき、本家本元のゆっくり文庫さんや筋之助さん、amさんなどの「素材を生産できる方々」は強い。もちろん素材制作には時間や気力等のコストが掛かるが、私の場合は素材作成に関するノウハウが皆無なので、自分で素材を作ろうと思ったらおそらく動画制作以上に時間が掛かり、新作動画を上げるのは数年先……というような状況になってしまうだろう。


 というわけで、今ある武器で戦うしかない。



 ざっと状況を確認すると

・妖怪やモンスターは出しにくい
・人間の狂気等の表現も難しい
・直接的なグロ表現などもできない


 えっ、この縛りでホラー動画を!!? できらぁ!!






~~~~中略~~~~




できたーッ!!!




目隠し遊び_Moment
(素材がないものは画面に映さない力技)










③、次回作について


 
 少し遅れます。

 何事もなければ年内に投稿できると思いますが、気長にお待ちください。
(続きものの最後だけ投稿が遅れて申し訳ない……)

(海賊版)【ゆっくり文庫】 蒲松齢 「幽鬼」













①、原作について



 清代に蒲松齢によって書かれた中国の怪異譚 『聊斎志異』に収められた短編小説、「小謝」。

 この蒲松齢という人物は面白いひとで、街ゆくひとに「変わった話はないか?」と聞いていたそうだ。社会的な地位としては「小謝」の主人公と同じく生員のまま一生を過ごした。家庭教師を引き受けて生活しつつ、何度も受験するも、どうしても郷試に受からなかった。
 そのせいか、『聊斎志異』に出てくる主人公たちは生員であることが多い。

 原作は妖艶。

 この一言に尽きる。性的な描写もあって色っぽい。400年前のライトノベルとも呼べる。『聊斎志異』の中には幽鬼と化け狐が人間の男を取り合って争う話なんかもある。幽霊と酒を呑んで友達になったり、花の兄妹と一緒に暮らしたり、絵の中に入り込んで生活したり、バラエティ豊かで面白い。「酒虫」も『聊斎志異』の作品だ。また、当時の物語らしく政治色も入っており、風刺が効いている。











②、動画と原作のちがい



 動画と原作では色々と違う。


 まず、最初の導入シーンからして原作にはない。居酒屋のシーンは2005年のドラマ「聊斎志異」からアイデアをもらった。(こちらは中国のTVドラマで日本語化はされていない) 他にも、幽鬼が本を投げ合ったり、陶が友人と話し合ったり、道士との問答から、果ては物語のオチまで原作と違っている。


 一番大きな差異である、物語の結末について説明しよう。



 原作では道士の札で幽鬼が人間に戻って、三人で幸せに暮らす
 動画では逆に人間が幽鬼になって、三人で幸せに暮らした


幽鬼_Moment3





 これは奇をてらったわけではなく、伝えたいテーマのために改変したのだ。












③、テーマについて





 台本段階では、物語内で2度も明言させるつもりだった。


 ただ、私が解答をポンと出すだけでは、視聴者の皆様に、頭を使って考えてもらえるか不安だった。だから、主人公は友人の「どうするんだ?」という質問に対して、無言の笑顔で応えさせた。道士も主人公の質問に対して「既に答えを出しておる」とはぐらかすように変更した。(半年前の私なら、こーゆー小技を思いつかなかったでしょう)



幽鬼_Moment2







 「幽鬼」のテーマは
 その人物の良し悪しは、当人の行いによって決めるべし。でした





 「幽鬼だから」「自分にとって邪魔だから」という価値基準で行動していた初期の主人公はボロボロに疲弊するが、そういった色眼鏡を外して、自分と同じ、尊重すべき相手として幽鬼と接するようにした主人公はうまくいく。(ここら辺の決意表明を、中盤の居酒屋のシーンで行わせる予定でした)




 最後の決断のときに主人公は「自分が幽鬼たちに合わせよう!」と腹を決めた。だからラストが原作とちがうのだ。原作の、幽鬼が人間に戻ってしまう結末は、「やっぱり人間って最高だな!」という動画のテーマとはまったく異なる答えに行き着いてしまう危険性があった。正直、こういった翻案に対する皆様の反応が読めず、動画を作りながらずっと不安だった。











④、動画作成について




 幽鬼を可愛らしくみせることに尽力した。
 可愛らしさというものは顔の角度ひとつで崩れてしまうこともある。本家本元のゆっくり文庫さんの強化素材があったおかげで表現できる幅が広がり、より可愛らしくなった。そもそも灰色の顔パーツがなければ、幽鬼を作る気にもなかなかっただろう。いつもながら、ゆっくり文庫さんには頭が上がらない。




 上でも述べたように、制作しながら何度も不安に襲われた。
 「制作中断」の文字が頭をチラついた夜もたくさんあった。それでも私が手を動かせたのは、いくつかの幸運が重なったからだ。まず、私以外のゆっくり文庫のリスペクト動画がいくつも投稿された。他所様の動画を見ると元気を貰える。特に最近投稿され始めたソウ助さんは投稿ペースが速く、「止まっている場合じゃないな!」と背中を押された。(他の投稿者様方にも個別に感謝の意を表明したいところではありますが、涙を呑んで割愛)



 もちろん、皆様のかつてのコメントからも助けてもらいました。
 ありがとうございます。



 次回は番外編動画を挟みます。お楽しみに!


(海賊版)【ゆっくり文庫】 レイ・ブラッドベリ 「ロケット」













①、原作について




raybradbury.jpg
(レイ・ブラッドベリ)


 原作は1950年に書かれた22Pほどの短編SF小説。

 当時のアメリカは絶好調で、燃費の悪い大型車がよく売れたそうだ。宇宙開発に関してはロシアが犬を宇宙に送り込むよりも前。アメリアがV2ロケットを改良して宇宙にハエを放っていたような時代である。それからざっと70年近くたった。(ワシらはロケットに乗っているかね?

 原作は動画ほど結論をはっきり言わない。実に文学らしい奥ゆかしさだ。



 












②、動画制作について



 今回は「紙芝居から演劇へ」を意識して動画を作った。

 過去の二作はどちらもナレーター(霊夢)が読み上げる地の文が多かった。そのために「紙芝居っぽさ」が感じられた。それはそれで良いが、別の手法も学んでおきたかった。ゆっくり文庫さんのような「演劇らしさ」を出すために、地の文を削り、キャラの動きと会話文を増やした。キャラの表情をころころ変える編集は手間が掛かるが、面白かった。主人公のボドニがロケットに乗って、宇宙旅行を妄想するシーンは地の文を削りまくったせいで伝わらないかと危惧していたが、動画のコメントを見るに杞憂だったようだ。うれしい誤算だ。

ロケット_Moment妄想




 SF動画のための素材は意外と少ない。

 以前、ゆっくり文庫さんが「迷子のロボット」を動画化する際に苦労されていたが、私も似たような状態に陥った。脚本はあるのに素材がない。家族で宇宙旅行に使うようなロケットの内装写真が欲しい。もちろん、既存のキャラクターが写り込んでいない状態の、無人の光景が望ましい。それも1枚だけではダメだ。ハッチの前、操縦席、子供たちが戯れるスペース、空っぽの機関室……

 SF素材がなかったから、過去の写真を使った。

 第一次世界大戦に使われた潜水艦の写真だ。ちょうどいい狭さ。ちょうどいい円筒の構造。ちょうどいい機械らしさ。未来の物語を作るために過去の遺物を掘り起こす。意外なことに、そこまで違和感なく画面を作れた。


ロケット_Moment艦内







③、ボドニは何を選んだか?



 「子どもを優先したのか」というコメントを見て、頭を抱えてしまった。

 その結論なら、最初の「誰か1人を火星に行かせる!」というアイデアと大差ない。ボドニは「みんなでおいしく朝食を食べられる道」を選んだ。それは夢を叶えることにくらべれば、笑ってしまうくらい簡単だった。(簡単なことじゃないか! 何を悩んでいたんだか!


ロケット_Moment朝食






 本当は私が冒険した箇所について詳しく触れるつもりだったが、今回は割愛する。
 原作と比較すると差異がハッキリわかって味わい深い。是非、原作も読んでみてください。面白いよ。



 さて、次は何を作ろうか

プロフィール

みょこすけ

Author:みょこすけ
ニコニコ動画で古典文学を翻案した動画を投稿しています。

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